Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
しかし、それもいったい何んのためだ。
久慈は千鶴子と別れた後でいつも行きつけのカフェーへ行った。そこへは矢代と真紀子とが来ている筈だったがまだ二人は見えなかった。顔馴染の外人らは久慈にみな日華の戦争の起っていることを報らせ、どうだ少し日本が負けているようだが大丈夫かと心配そうに訊ねた。
「いや、あれはみな嘘だ。」
と久慈は答えた。しかし日華の日ごろの関係も知らぬ外人の心にさえ、そんなにこの日のニュースは大きく響いているのかと思うと、事実の当否以外に、響きの方が事実となって、何事か次の芝居の人心を動かしていく瞬間の偽りを久慈は感じた。そして、それがつまりは歴史となって世の中の表面に氾濫しつつ進んでいくということも。――
外人たちの中に混りいつもテラスに来ている李成栄という中国の画家は、特別にこの日は誰よりも大きく久慈の視線の中で幅を占めて見えた。李も久慈と視線を合す度びに視界に一点邪魔者がいるという顔つきで、煙そうに横を見て、先夜柳田国男の日本伝説集を読んでいたドイツの青年と話した。久慈と李はどちらも悪意を持つ理由がなくとも、ただ単に視線を合したことで、悪意に似た抵抗が頭の中に生じるある微妙な事実は争われず二人の間で起っていた。