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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

別れを頼む老父へ、最初はマルグリットも、「愛してるから駄目。」と強い拒絶の言葉を云う。しかし、真に愛しているなら、「愛してるから駄目。」と、何ぜそのまま押し通して未来を造っていかなかったか。矢代はどこかの桟敷の奥から今もこの光景を見ているにちがいない千鶴子の姿を想像した。

「愛してるから駄目。」

世の中の不徳の数数を撃ち殺していった椿姫の美しい心が、今みなの心の中に生きているに相違ない。それでもなお心をけがして見ているなら、早くけがしてしまえ。――矢代は今まで嫉妬に苦しめられていた自分に腹立たしくなり、もう後を見ずに帰ろうかとも思った。

「いいわね。」

真紀子は幕が降りると立って鏡に顔を映し、ひとり桟敷の外へ足早やに出ていった。矢代も後からついて出たが、どういうものか真紀子は露台の端に立って下を見降ろしながらも、さも矢代のいるのが邪魔物のように憎憎しげに黙っていた。少し青ざめた顳のあたりに薄く浮き上っている真紀子の静脈の波打つのを矢代はちらりと眺め、思いがけなく不意に足もとから狂って来たこの真紀子の感情の収拾は、これは容易じゃないと思った。しかし、慰めようにも元来がこんな夜に真紀子を誘ったことがすでに失敗だったのであるから、一度は来るに定っている不機嫌だった。