Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「そんなら人間はどんなになるんですの。」
千鶴子はくるりと矢代の方を振り向いて訊ねたその拍子に、あまり真近に矢代の顔があったので思わずまた後ろへ身を退いたが、千鶴子のその眼の大きさに矢代は質問が何んだったのかふと忘れた。昨夜オペラの桟敷の中で千鶴子の腕を巻き込んだときには、ソファに同じ方向を向いて坐っていたときだったので、そんな軽はずみなことも自然に出来たのであったが、今は互に背を合せるように坐っている一つのベンチだった。身体のねじれと一緒に心もねじれたように胴で曲るのを感じつつ、矢代は動かぬ千鶴子の眼の中のしんと静まった一点を今は何より美しいと思って見た。
「あなたがそっちを向いてると、話が途切れて面白くないな、僕たち蛙になってるんだから、パンも食わさぬ人間を一つ今日はやっつけよう。何んだこんなもの。」
と矢代は云ってまた睡蓮の絵を眺めた。
「ほんとにコーヒー飲みたいわね。出ましょうか。ロンパンへ行ったらきっとあってよ。」
千鶴子が立ち上ったので矢代も立って外へ出た。もうかなり空腹だったが、二人はサンゼリゼの下のロンパンまで歩くことにして広場の噴水の傍をわたって行った。