Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
そのころあたし一度来てみたかったわ。どんなに良かったでしょうそのころは。」
「あ、そうだ。このあたりのベンチでアルマンが椿姫を待ったんですよ。ロンパンの大きな樹のある前のベンチと書いてあったようだから、たしかにこのあたりに違いないのだ。あるいはこのベンチかもしれないぞ。」
矢代はおどけた風にそう云いつつ頭上の二かかえもあろうマロニエの大木の葉を仰いだ。
「ここだったら面白いわね。でも、これは鉄のベンチだから、そのころと変っちゃいないわけよ。」
千鶴子も好奇心に満ちた笑顔でベンチの背を撫でてみたり組み合った八ツ手のようなマロニエの厚い繁みを仰いだりした。
「何んでも馬車で椿姫がブロウニュの森の方へ、ここを通って毎日行くんですよ。それが日課だったんですね。それを聞きつけたアルマンが、友人とここで待ち伏せしてるんです。椿姫はイタリアの麦藁帽子に、レースの飾りのついた黒い服を着ていて、乾葡萄を入れた手下げ袋を持ってたというんですがね。」
椿姫の細い優雅な姿を想い描いている二人の顔へ、風の方向に揺れ靡いていた噴水の霧がゆるやかに廻って来た。姿を揃えた樹の幹の間へ落ちている日光の縞の中でひそかに虹が立っていた。