Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

」

「でも、ロンドンへもいらっしゃるんじゃありません。」

「行きます。」

「そしたら、またお逢い出来ますわね。」

「ええ、そのときはどうぞ宜敷く。」

と矢代はこう云って、紅茶を命じるベルを押した。窓から風が流れて来て軽く二人の顔の前を抜けて通るのも、肉親といる窓べの気易い風のように柔かだった。二人はどちらも黙っていた。硬直はとれたものの疲れがそれだけ身体全体に加わったように、矢代はぐったりとして背を動かすにも骨が折れた。

「まア、静かですこと。」

はるばるとよくここまで来たものだと云うように千鶴子は吐息をふっと洩らし、印度洋の暑さにいつの間にか延びていた卓上の桃の芽を見て云った。

「明日はあたし、ジブラルタルよ。あなた、スペイン御覧になりたくありません。」

「あそこは一つ、ぜひ見たいもんですね。」

「じゃ、いらっしゃらない。」

「そうね。」と矢代は云って窓を見ながら考えた。

人の降りてしまった空虚の船で、千鶴子とジブラルタルを廻る旅の楽しさを思わぬでもなかったが、しかしそれより今千鶴子と別れ彼女がパリへ来る日を待っている方が、それまでに変っているにちがいない千鶴子と出会う一刻に、はるかに楽しみも深かろうと思われるのだった。