Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「あッ。」
と叫んだ。一同真紀子の方を振り返ると、一隅から飛び立った蝙蝠が壁にあたってばたばたと羽音を立てていた。丁度蝙蝠の突き衝っている壁の上方高く一枚の額のあるのを久慈は見つけた。暗さの中で埃を冠っているのではっきりとは見えなかったが、何んとなく聖体拝授の儀式絵らしい。
「おお、恐わ。何か出て来たんだと思ったわ。」
真紀子はまだ久慈の腕を掴んだまま青ざめて云った。
「あたし、もう帰りたいわ。何んだかぞくぞくして来るんですもの。」
「しかし、鍵はもう三つも使ったんだから、後二つでしまいだ。二つなら行ってしまおう。恐わけれやあなた僕に掴まってらっしゃいよ。」
久慈は絵の下へ近よって石のざらざらした肌に手をつき、
「どうだ一つ記念にこの額持って帰ろうかね。大司教のいたところだから、この絵必ず名人の絵に定ってるよ。」
「駄目よそんな乱暴な。」
真紀子が久慈の手を後ろへ引きつつ戻ろうとしている間にも塩野だけは、未開の境地を突進するような執拗な眼つきで、早や次の鉄の扉の鍵穴に鍵をさし込み、ひとりがちゃがちゃと鳴らせていた。しかし、その扉の固さは蹴りつづけ押しつづけても開かなかった、蝙蝠だけ扉へぶち衝る塩野の肩の鳴る音にびっくりして、皆の間を馳け廻ってはまた壁に翅をぶっつけた。