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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

今も久慈はそのときのように薔薇を折って真紀子の胸へさしてやろうと思ったが、それも気がさして思いとまった。異国人には何気なく云える、「君は綺麗だ。」とか、「僕は好きだ。」というような言葉にしても、さて日本の婦人に向っては嘘だけ急に飛び出て眼立つのだった。そうかといって、別に久慈は心の表現に困っているわけではなかった。

真紀子はとくからもう久慈の気持ちを察しているらしく、落ちつかなげにあたりを廻っている彼の挙動を見ても、さも知らぬふりで少し俯向き加減なのどかな様子のまま爪を磨いた。

「あなたさっき、何んだか分らなくなったって仰言ってたわね。何んのことだったの。あれ?」

肩を動かさず顔だけちょっと振り向けた真紀子の眼が、ほんの瞬間のことだったがひどくなまめかしい嬌奢な視線だった。

「何んか云ったな。ときどき疲れるとあんなことがあるんだ。今まで分っていたことが、急にぴたりと停って分らなくなるんだね。頭の中の心臓が急に停ったみたいな風になって、中が空になるんだ。」

「神経衰弱ね、あなたも。」

久慈は薔薇をち切ると知らぬ気に後ろから真紀子の襟にさした。

「神経衰弱は卒業したさ。