Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
ちゃんとあるよ。ここにだってあるさ。」
「そんなものありませんよ。」
真紀子は薔薇を差す真似をしてから久慈の上着を脱がし、毛布の下へ彼を寝せようとしたが、また久慈はむっくりと起きて来た。
「あるじゃないか。見えるぞ。はっきり見えて咲いてるぞ。」
「何んで馬鹿なこという人でしょう。みんな咲いてますわ。」
「ふん、不合理が咲くか。」
真紀子は別れた前の良人を扱い馴れた手つきで器用に久慈の靴を脱がし、ズボンを脱がしネクタイも手早く引き脱してから彼を寝かした。仰向きになって眼を瞑っている久慈の眼から涙がしきりに流れて来た。
真紀子は窓をあけあたりの乱れを片附けてから部屋の灯を一つずつ消した。そして、最後に枕もとのを一つ残したその傍で、前跼みに小さくなって煙草をひとり吸っていた。ときどき彼女は頭をかかえたまま身動きもしなかったが、そのうちに声を忍ばせて静かに泣き始めた。声に混じり煙草の火で頭髪の焦げ縮れる音がじじッとした。
――仕立てたばかりの格子模様の洋装で久慈の母が立っていた。久慈は母の紺色の襟飾が長く下まで垂れているのを見上げ、海軍の将校服に似ているねとひやかした。