Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「あたし、真紀子さんはウィーンから御主人お迎いにいらっしゃるの、お待ちになってるんじゃないかと思うの。きっとそうよ。」
さきから羞しそうに顔を染めていた千鶴子は、赧らむ自分の顔に急に元気をつける苦心で背を延ばした。
「とにかく、僕は矢代より君の方がさきから知り合いだから、こんなときになると、どっと君にもたれかかってしまいたくなるんだね。まだ僕らは旅の途中なんだよ。何が起るかしれたもんじゃないのだ。まったく今日はしみじみとそう思った。もう自分がさっぱり分らん。いったい、自分とは何んだこれや。」
ふとこう呟くように云ってから久慈は壁を見詰めたが、何を云おうともう知れている答えばかりだと気がつくと、云いようもない退屈さを感じてまた俯向いた。膝から延びた千鶴子の透明な足首に泛き出た毛細管の鮮やかさが、鋪道で飛びついた犬の蹠のひやりとした冷たさを思い出させ、あれからこれへと渡って来た自分のこうしているさまに、また久慈は溜らなく不快になって来た。
「ああ、もう眠い。帰ろう。」
と云って久慈は立ち上った。そうして、二三歩部屋の中を歩き廻ってからまた千鶴子の横へ並んで一寸腰を降ろし、