Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「ね、どっかへ明日から逃げてってればいいね。スイスへでも暫く行って来ようかな。」
「そうね。その方があたしはいいと思うわ。」
「ひとりじゃしかし淋しいなア。」
「でも、あなた真紀子さんを愛してらっしたんじゃないの。あんなに。」
「君にまでそう見えたかね。」
と久慈は歎息するように云って後へ長くなった。片手を寝台の上へつき顔だけ久慈を見降ろすようにしている千鶴子の顎が柔く二重にくびれて見える。久慈はもうここから帰りたくないと思えば思うほど、いつの間にか越し難い二人となっている遠慮を感じ、延び出そうとする意志をひき締めひき締め、さも何事でもなさそうに下から千鶴子を仰ぎつづけるのだった。
「まったく考えれば馬鹿馬鹿しいと思うんだが、しかし、君、明日の朝になればきっとまた真紀子さん、僕の部屋へやって来るに定ってるんだからね。そしたらもう逃げられないや。逃げるなら今のうちだ。」
「じゃ、危機一髪ね。」
「そうなんだよ。後数時間の運命だ。」
こう云って久慈は笑いながらも、危機一髪は実はこちらの方かもしれぬとじろりと千鶴子の眼を見上げた。
「でも、そんなこと、そんなに難しいことなのかしら。