Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
見てゆくうちに、どの絵も初期のセザンヌの正確な筆力の延長が狂いを起さず、自ら枝葉の延び繁った写実の深まりゆくさまを壁面に順次に現しているので、その前に立った黒い服装の真紀子の姿まで、きりりと締って無駄のない美しさには見えるのだった。
「一番普通のことをセザンヌはやったんだな。それが皆には出来なかったんだから、おかしなものだ。」
と久慈は途中で真紀子に呟くように云った。そう云いながらも彼は、自分もごくありふれた日常の普通のことをそのまま普通に考えることの出来なくなってしまっている妙な頭に気がつき、ときどきはこのような絵も眺めて頭を正さねばならぬと考え、自分の頭のどこがどんな風に事実の正しさから曲り遠ざかっているかと、あらためて考え直して見るのだった。
「こんな絵を見ていると、迷いが起らないからいいね。果物だと取って食べたいように描いてあるだけだし、あの爺さんの絵だと、一つ冗談でも云って笑わしてやりたくなるから妙だ。何んの変哲もない絵ばかりだね。」
「そうね、それがやっぱり難しいのね。」
と真紀子は頷きながら、手に刺さりそうな鋭い矢車草の葉のもり盛った花瓶の絵の前へ歩を移した。