Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
しかし、またそれがすぐ国歌に変ってマルセエーズが放じられた。見ている群衆はどちらの歌が空に響きわたっても同じで、誰も声を立てず、すでにこのような訓練が行きとどいた後のように静かだった。
「何か起るのかしら、見ている人、嬉しそうでもないのね。」
と真紀子は不安な顔で久慈に訊ねた。
進行して来る団体の幟が中核をなす赤旗ばかりになって来ると、眼の光りも異様な殺気を帯び、腕組む粒揃いの体の間から勝ち誇った巌乗な睥睨が滲み出て来た。みな誰も紺の背広にネクタイを垂していたから、一見、パリ祭をぶち壊した群れのようには見えなかったが、文化団体とは違い、緊張した弾力が見るから観衆を押し動かして迫った。幟の中にもここのは明らさまにスターリンやレエニン、それからマルクスなどという本家の似顔絵ばかりを押し立てて、もうフランスという国情の匂いなど少しもなかった。
矢代は見ていて、この行列のさまを翻訳して各国へ報らせれば、分り通じるところは、この国情の失われ取り払われた個所ばかりだと思った。こんなに国情のない部分ばかりが他国に通じ、その国の大部分を形づくっている国情という伝統が通じないとすれば、――矢代は、その次ぎに起って来ることは凡そ想像することが出来た。