Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「ロンドンを出るとき電報を上げますから、そしたらあなたも船へ下さるんですのよ。あなたはきっと下さらないと思うけど、駄目よそんなの。ね。」

と今度は強く千鶴子は云って笑顔を消し矢代の答えを待つ風だった。

「出します。」

と矢代は簡単に答えた。そのまま二人は言葉の継ぎ穂もなく黙っていたが、矢代は椅子の背に落ちつきながらも、浮き上っていく興奮にどこか身体の綱がぶつりと断れた思いだった。葡萄酒が来て女中が下へ降りてから、千鶴子は矢代の後の床へ膝をつき寝台の上で黙ってお祈りをした。

チロルの山上のときに一度千鶴子の祈るところを矢代は見たことがあったが、今夜のはひどくこちらの心を突くように感じ、彼もその間ともかく伊勢の高い鳥居をじっと眼に泛べて心を鎮めるのだった。

暫くして千鶴子が立って来たとき、矢代はカソリックのお祈りをした千鶴子に気がかりな何んの矛盾も感じなかったのが気持ち良かった。千鶴子は前とは変って笑顔も生き生きとして来て、葡萄酒をグラスに瀝いでから二つ揃えた。二人はどちらも黙って葡萄酒を飲んだが、矢代は、今こんなにしていることが婚約を意味していることだとひそかに思い慎重にコップを傾けた。