Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
そして、大きな爆音が聞えドアが閉ると、矢代は血がどっと頭にかけ昇る思いでまた手を大きく振りつづけた。
それからもうすぐだった。機体は地の上を辷って舞い上っていった。千鶴子は窓から黄色な手袋だけいつまでも振っていた。しかし、それも見る間に方向を変えて空高く上り、一点となるやもう矢代には何もない空だけ静かに青く見えているばかりだった。
「ほんとにあの空にはたったあれだけか。」
と矢代は暫くぼんやりとしていてからそんなに思ったほど、空はフランス色の鮮やかな空しさで静静としていた。彼は取りとめのない泡の消えるような音を聞きつづけている思いで、待合室の隅のカフェーの椅子にひとり坐り出て来るコーヒーを待った。
パリ祭がすむと急に避暑に散ってしまう慣しらしいパリには、なるほど人が眼に見えて少くなった。そこへ千鶴子が帰ってから二日目に、久慈と真紀子たちもマルセーユ廻りでスペインへ旅立った。ひとりになった矢代は朝から閑を持ち扱いかねて、ブロウニュの森の中を終日あちこちとさまよい歩いた。ときにはまた風来坊のように、名のある古い建物の門柱についている彫刻を見て廻ったり、見残した絵を見て廻ったりした。