Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

と訊ねたことがあった。

「これは日本にとっては、大切な大切なものです。」

とその外交官の一人の方が笑って答えた。国と国とを繋いで動かそうという一本の希望に似た綱が、どちらへどんなに引き合うのか分らなかったが、ただこのような鞄の中に入っただけで簡単に往来をしているのを見ると、矢代は一寸奇異な感じがした。どこの国も、この鞄の中の希いを見たくて溜らぬという時であるだけに、狭い廊下で鞄がズボンに擦れて通るときは、矢代も思わず緊張した。隣室では夜も二人の外交官らは、一人が眠ると他の一人が起きていて、交代に鞄の番をしている苦心の様子を見ていても、その中の秘密の重さが思い知られた。それもソビエットを挟みドイツと日本とを繋ぐ縄である以上、この一台の客車の進行していることは、ソビエットにとって、身のひき緊る愁いでもあったろう。しかし、何ごとも希望を満たそうとして動いていることに人間は変りはないと彼は思った。よしたといそれが幻影に終ろうとも。――

こんなに矢代の思ったのも、一つは彼にもまた希望や幻影が入り交って襲って来ていたからだった。それは日本へ帰ってからするべきさまざまなこと、勉強や、計画の実行などと、考えれば、彼のしたいと思うことがきりなく湧いて来てやまなかった。