Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
しかし、そのうちでも千鶴子と結婚するということだけは、これ一つ彼には不安だった。こんな不安は千鶴子とパリにいるときでも附き纏って放れなかったことだったが、今もなおそれは一日一日と深くなるばかりだった。
「日本へ帰ってから変るのは、やはりあなたの方だわ。あたし、あなたが変ってもあたしは変らないと思う。きっとあなたの方が変ると思うわ。」
別れるときにそう云った千鶴子の言葉を、矢代はその後もよくそのまま呟いてみたりした。しかし、あの別れる際にあれほど切実な響きを含んでいた声も、何んとなく今は空虚な流れを伴って感じられた。それは誰でも迂濶に一度は云い、誓いに副う感傷をひき立てる表情になるとはいえ、云ったがために歓びよりも、苦しみを生むことの方が多くなる性質の詩情であった。そうかといって、矢代は千鶴子を今も信じないわけではない。またアメリカから廻って来た千鶴子の手紙も、別れの際の表情を裏切っているものでもなかった。ノルマンデイの船室から持って上ったらしい海老色の二疋の獅子が絡み合っている模様のレタアペイパには、ニューヨークの埠頭の壮観さや、船の中で知人になった人人のことや、閑にまかせた旅の観察などと、明るい筆つきで書いてあったが、特に矢代の気持を沈ませるようなことは何もなかった。