Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「幸子はだいぶ良くなりましたよ。今夜も来たいと云ったんだけれど、また悪くなられるとね。」

と母は矢代の妹の容態のことを云った。

「良かったですよ。どうも、あれのことが気になってね。疲れが癒ったら、僕病院へ行きますよ。」

「そうしておくれ。喜ぶわ。」

「だけど、僕、何んだか一度、滝川の家へも行きたくってね。東北地方が一番見たいんですよ。」

と矢代は云った。母の実家の滝川家のある東北地方を見ることは、帰って彼のするべき計画の第一歩のように思われていたからだった。しかし、母とそんなことを話している間も、彼は父ひとりをそちらへ捨てているような自分の態度に気がついて、実はそうではない筈だのに、何ぜともなく父には、云うべきことも云いにくいことがさまざまにあるのだった。

子供の洋行を誇りとしているらしい明治時代の父に、矢代は自分の思いを伝えるには、どう云えば良かろうと咄嗟に考えたが、さきから父はただ「ふむ、ふむ。」と云うばかりで、窓から外を見て黙っていた。前に父は、自分は金を儲けたら一度だけどうしても洋行をしてくるのだと、口癖のように云っていた。その父の若いころからの唯一の念願も、それも子の矢代が父に代って、その意志を遂げて帰って来た今だった。