Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
すべてこれらの事は、この二家にとっては偶然とはいえ、偶然には神秘という契機をもった必然性が常にある。――このように感じたのは、恐らく子の矢代よりも、黙黙としてトンネルを穿つことに専心した彼の父の労苦の中から見出すことが出来るかもしれない。
東京へ矢代の帰ったのはもう十月を越していた。彼はその翌朝眼を醒してからすぐ庭へ出てみた。朝日の射した庭にはもうよく爆けた石榴の実が下っていた。彼は一番近くに垂れている石榴を摘まみ下げ、実の裂け口に舌をつけて汁を吸いながら、今日は一つ妹の幸子の所へ見舞に出かけようと思った。自分の勤めていた建築会社の整理部の仕事は、彼の小父の会社であり、当分休暇の届けをそのままにしていてもよかったので、すぐ社の方へ出る用もなかったが、病気もよほど良くなったという妹にだけはすぐ彼は会いたかった。矢代がパリで幸子から受けとった手紙の中に、
「お兄さんは東京を故郷だと発見されて羨ましいと思いますが、あたしは自分の故郷がどこにあるのか分りません。それが悲しいと思います。」
そういう意味のことが書いてあったのを思い出し、彼は幸子のため凋れた気持ちを何より先ず慰めてやりたかったが、生れて以来東京で育って離れたことのない妹に、お前の故郷はここの東京だと教えたとて、東京を故郷だと思えない心に向って何んと