Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「あたし、横浜へ行ってみたいわ。」
とアンリエットはショコラの出たときに矢代に云った。
並んだ黄色な籐椅子にいっぱいに詰っている外人たちを久慈は煙草を吹かしながら眺めていたが、突然矢代の方を向き返ると真面目な顔で質問した。
「君、君はパリへ来て一番何に困ったかね。」
矢代はしばらく黙って考えていてから答えた。
「そうだね、誰一人も日本の真似をしてくれぬということだよ。」
「ははははは。」
久慈は思わず噴き出した。しかし、急に笑いとまると彼もだんだん沈鬱になっていった。ショコラの軽い舌触りも不用意な久慈の質問で味なく終ろうとしかかったときである。久慈は歎息をもらすと、
「あーあ、どうして僕はパリへ生れて来なかったんだろう。」
と肘ついた掌の上へ頬をぐったりと落して呟いた。
瞬間、矢代は胸底から揺れ動いて来る怒りを感じて青くなった。けれどもそのまま身動きもせず、街路樹の立ち並んだ黒黒とした幹をじっと眺めていた。
「僕はヨーロッパが日本を見習うようにしたら、どんなに幸福になるかとそればかりこのごろ思うね。どうもそうだ。」
「ふん。」
久慈は鼻を鳴らしてボーイを呼んだ。