Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「とにかく、あれはおかしな代物だ。」

と矢代は、こんなときには薄笑いを洩してギリシアの文明について考えるのだった。

また彼のその薄笑いは彼ひとりのみならず、東洋共通の表情にも通じたもののようでもあり、恐らくそれも東洋だけの愁いでもなく科学の仮面とされて遠く波路を渡り、東洋に押し出されて来たカソリック自身の歎きにもちがいないことだった。

こんな意味から選んで持ち込んで来た矢代の書物の類も、宗教は宗教のことの歴史だけより書いてなく、科学は科学だけの歴史より書いてなかった。今の矢代にとって目下何より知っておきたいことは、この二つの歴史の争いもつれたその接点の歴史だった。

矢代は朝起きると朝食の前に小屋を出、宿まで行って浴槽に浸った。朝の空に突出した高い浴槽は、他には見られぬ稀な場景を泛べ、ここの温泉は毎朝の彼の一つの愉しみだった。

さし渡し三間もある白いタイルの円形の中に、透明な湯が漲り溢れていて、部屋から入りこんで来る客も朝は賑わった。浴槽内の温度が外気を遮る大きなガラスの壁面の冷たさに触れ、物凄い濃霧の湯気となって場内に巻き返るので、肌の触れ合うほど間近に顔を並べている隣りの客の顔さえ朧だった。