Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「宿へ着くまではちょっと驚かされるんだが、明日になるとこれで捨てたもんじゃないですよ。」

橇が動き出したとき、窮屈な座席の後で、矢代は槙三を連れ出して来るまでの千鶴子の苦心を想像して云った。彼女の病気のことや、冬の休暇になった槙三の保養のことなど話が出ているときも、橇の片側がひどく雪路で傾いた。

「でも、あんなへんな病気は、一度してしまえば安心なものね。」

と千鶴子は振り向いて云った。町並みもなくなり馬の足音の調子がようやく出揃ったころだった。橇の脇板へ肱をついている矢代の指先だけ、千鶴子の肩の外套の毛に触れ温くかった。マルセーユへ上陸した夜、足の強直病にかかり腕を支えてくれたのも、この同じ黄鼬鼠の外套の温くさだったと彼は思った。あの夜の税関の狭い割石路を、船まで扶けられて歩いたのが千鶴子との始まりだったが、今はこの雪の中だった。洋灯の鈍い光圏の底で舞う雪片が大きくなり下からも吹き上った。

「自炊してらっしゃるようでしたけど、お続きになって。」

千鶴子は笑って訊ねた。

「どうしまして、宿屋よりよっぽどいい。」

「缶詰のお土産だけは持って来て上げましたのよ。