Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
からして違って来ますからね。物理学にもたしか、球面を外から中へ入るのと、中から外へ出る違いと、二つの相違があったと記憶してますが、どうですか。」
「それはあります。」と槙三ははっきり云ったまま、このときはいつもと違い急に微笑が顔から消えて緊って来た。
矢代はこの槙三という兄――それはあるいは、いつか自分の兄となるかもしれぬ青年の中心の考えを、実は少し世間という実社会の中心へ引っ張り出して、触れさせてもみたく云ったことだったが、微笑の消えた槙三の微妙な表情を感じると、この人物は兄の由吉とはまた幾らか違うと、彼を頼母しく思うのだった。
「やはり地球というものは球面をしていますよ。だから、ギリシアの平面の三角幾何学ばかしじゃ、実社会という、つまり球面上の三角形を計るには誤りを犯すことも多いのですね。それはそうと、日本の昔からの幾何学は球面の三角形ですよ。リーマンだ。どうしたって、平面と球面とは違うなア。」
こう云ったそのとき、矢代は、自分の一番云いたかったことはそんなことではなく、千鶴子が外国へ由吉と一緒に再び行ってしまうかもしれぬ、その危険を引き留めることだったと思った。