Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
そのうち寒けを感じて来たのでまた湯に入ろうとしかけたとき、
「あら。」
と千鶴子が不意に水面から顔を上げた。
「やあ、お早う。」矢代は全身鏡を受けたように感じて云った。
「いついらしたの。」
「今さきです。」
二人は湯に浸ったまま朝日の射し込んで来る窓を見上げて暫く黙った。体で膨れた豊かな湯の連りに、乳色に染った眼界が雲間の朝の浴みかと見えた。少し離れた位置をとると、もう顔も見別けのつかないほど霧が舞い込み、ぶつかる湯の波紋が二人の顎の間できらきら光った。
「あれからよく眠れましたか。」と矢代は訊ねた。
「あれからお手紙書いたの。後でお渡ししますわ。」
「それはどうも――」
「なるだけあなたも早くお帰りになってね。」
浴槽の縁へ溢れる湯の波が、朝の眼醒めのようにぴちゃぴちゃ元気よく鳴りつづけた。窓の上の長い氷柱の垂れ間に聳えた雪の山山を眺めていると、矢代は二人の結婚の前に邪魔している多くの事柄も、もう考えるのはいやだった。湯の温まりが全身に廻って来たとき、彼は窓の傍へ行って身体を冷やした。そのあたりだけは霧が届かず、見るまにガラスが体の温気を吸いとって曇っていった。