Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
」
矢代は手を持ってもう一度引き据えてみようとしながらも、飛び離れて逃げる千鶴子の速さに手が届かず、自分も立った。彼は二つそのソファを届けさせることにしてから店を出た。しかし店を遠のくにしたがって、今さきにした戯れもまだ早すぎるのだと思った。うつ向いて歩く足もいつか忍耐に重くなり彼は黙り込んだ。千鶴子も何んとなく黙って歩いた。
そうして暫く二人の靴音の喰い違ったり揃ったりするたびに、矢代の気持ちも浮き沈みして進んだが、また彼は雪の中で聞いた鼓の音を思い出した。それは前に前にと押し出す音のように、
「ぽん、ぽん、ぽぽぽん、ぽん。」
と胸中で響き、靴音の響きともなり、巷のひびきを貫いて透って来る何ものかの打音ともなって、矢代もだんだん爽やかに首べが上って行くのだった。
「ぽん、ぽん、ぽぽぽん、ぽん。」
いつ靴音が能舞台を踏みすすむ音のように変るか、彼は待った。
田辺侯爵の別邸は霊南坂を登った裏の高台にあった。重い閂のかかった両扉の門柱の間から玉砂利が見えた。矢代が塩野と連れ立って門を這入ると、寒むげな唇の色で、肩を縮めて出て来た大男の玄関番が二人の名を訊ねた。