Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

廊下の向うからもう由吉らの笑声が聞えて来た。夕暮の迫る砂の薄明りを眺めながら、矢代は、今夜の会は自分にとっては一つの査問会のようなものになるのだと思った。自分に関する千鶴子の兄の由吉と槙三の報告が、彼女の母へ届いている現在、新に侯爵のも加わってまた届けられるにちがいない以上は、やはり自分の運命を左右する一夜ともなるのだった。それも侯爵夫妻の一番知りたい自分たちのことは、千鶴子と自分との秘やかな交渉が、どの程度のところまで進んでいるものか見届けたいことだろうと思うと、二人の間が、すでに実際の結婚以上のものまで済んでいると見られていることも、十中の九までたしかな事だった。しかし、若い男女の二人が自由に外国を渡り歩いているときに生じる必然的なことが、果してそのまま当然に生じたかどうか、侯爵の方とて聞き糺して見ることも出来ず、また矢代にしてもそれだけは、こちらから示す明らかな表情もなし得べきことでもなかった。いま何か、矢代はふとそんな微妙なことで苦しさを感じたが、塩野の個展の祝賀会とはいえ、実は、侯爵や由吉たちが矢代と千鶴子から、そこの所も暗黙に聞き取りたい査問会の内容も含まれている夜会となることだけは、廊下の光りを踏みつつ彼も覚悟を決めるのだった。