Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

それというのは矢代の父が青年時代のあるころ、先代の久木男爵の会社の社員だったことがあって、かすかながらも、記憶の底からそれが浮き沈みしつつ頭をあげて来たからだった。たしかに今はどちらも、全く別な二家の子供たちだとはいえ、一時は父も世話になったと思う子の矢代の気持ちは自ら違っていた。

あらためて誰かに紹介でもされれば、ひと言それを述べ謝意を表したいと思ったが、しかし、こんなに上下の区別のない稀な会合の場合、むかしの主従関係を口にして空気を濁すということは、却って向うを苦しめることかもしれず、また傍に千鶴子のいるということが、なお矢代にそれを云わしめるのを妨げそうな気味もあった。

「新年になると、社長の久木さんが社員を集めて訓辞をされるんだが、一年にたった一ぺん、そのときだけ顔がみられるきりなんだからなア。」

と、こういうことを洩らしていたある日の父のひと言が、どういうものかいまだに矢代の耳の底から脱けなかった。

父はそのことを一年中の何よりの光栄に感じて云っていたのに、それに自分は、今は目前対等に久木男爵と会いながらも、父のその悦びを隠そうとしている時代の子供になったのだろうか。