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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「しかし、まさか先祖はあの時平の父の基経ではないだろう。」

矢代は父が寝てしまってからも、自分の書斎でひとり呟き、基経、時平あたりの歴史書を急に開いてみたりした。すると関白基経の生んだ穏子から二人の天皇までお生れになっているのが分り、これは有り難いことだと、俄に彼は清水を含んだ思いに立ち返って、暗怪な時平に代り、その妹の穏子の方の身の上を想像しながら、夜更けまで藤原北家の流れの行方を尋ねていった。しかし、父の云った基経は、まさか穏子の方のあの親ではないだろうと、今度は前とは逆で、寂しく西海の波のまにまに漂っていった田舎藤氏の末を、長い旅の愁いのように崩れた郷里の城砦を渡る松風とともに眺めるのだった。

彼は窓を開け雪の深さを覗いた。灯に射し照された梅は、明暗鮮やかな勁さで枝を雪中に差し交していた。その冴え静まった群落した枝を掠め、大粒の雪が夜ふけの物音のように降りつづけた。踊り狂う雪足の紊れながらも、幽かに梅の匂いも漂っている雪明りである。彼は日本の歴史の味わいに似たものをふと感じ、帰って来た郷のりりしい清爽さを身に沁み覚えて戸を閉めだ。彼は父の話した基経が何者であろうとももう同じことだと思った。