Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

彼は暫く手応えのない問いをつづけつつ、医者と並んで歩いているうちに突然慄えが来て止まらなくなると、そこで医者と別れてひとり引き返した。いつかは一度来る恐るべきことにしても、しかし、それが今来たのだ。何か切迫したものがいよいよ虎口を開けて身近に詰めよっているのを彼は感じ、それと闘う準備に寸分隙も赦さぬ注意力で、心の鞘を払い落とし、抜き身をさげたような待機の心構えも自然と出てくるのだった。

しかし、もう父はいないのだ。とまた彼は思った。時間がどこかで急に脱れ、勢いこんで自分の中へ流れ崩れて来るかと思われる。何ごとか壮大なものの傾き襲ってくる激しさも覚えて彼は空を仰いだ。そして、必ず昇天しているにちがいない父の魂の行方に対して祈った。顔に降りかかって来る雪の冷たさが、天に向う悲しみのように巻きのぼっては、また心に沁み落ちて来た。

「今夜はお天気が激変しましたからね。」

歩きながら、そう云った医者の言葉をふと彼は思い出した。がまた、亡くなる前に久木男爵と会ったことを父に報らせて喜ばせたことも、争われず刺戟を父の血管に与えた一条件になっているとも思われた。彼は家の中へ這入ってから、火鉢に火を起している母の横へ坐り、何かするべきことを考えたが、特に何もするべきことも無いようだった。