Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「わたしはお宅の旦那と、門口でお昼にお目にかかって立噺したばかりですよ。それにその夜亡くなられたとは、もうびっくりして、世の中が恐ろしくなりました。」
勝手口で母にそう云っている酒屋の主人の話も聞えるままに、矢代は告別式へ出る袴をひとり部屋で穿いていた。そこへ女中が悔状の郵便物を沢山揃えて小机の上に置いていった中に、一通千鶴子から来た見覚えの封筒が眼についた。彼はすぐそれを抜き出して懐中に了い込んだ。千鶴子にはまだ父の死を報らせてなかったのに、偶然にも手紙が告別式の前に届いて来たことは、内容はともかく、ともに彼女も父の葬儀に列ってくれる意志のように思われた。紋服の出入の激しい渦の中でも、矢代は何んとなく懐中に一点の温もりを感じ、消え残っている庭の雪を眺めて立っていた。もし父の死が今より遅く来たものなら、あるいは千鶴子も、自分の家の中心になって立ち働かねばいられぬときだった。それも、彼女のために先日買って届いて来たばかりのソファが、応接室で人知れず客を坐らせているだけの、今の勤めであった。
彼には父だけは自慢で千鶴子にひと眼見て貰って置きたいと思った。