Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
母は膝の上で丹念に会葬名簿を指で延ばしてから、それを額におし頂いた。
「あたしはこれから長生きをして、お父さんに見たもの皆報らせるんですよ。うんとあたしは、長生きしなくちゃ――」
ぼそぼそと独り言のようにそう呟く母の顔は、このときもどういうものか愉しそうだった。頬はもの腰の弱りとは違い、まだ醒めぬ興奮で色艶もぼっと良かった。
「そうよ。それが一番いいわ。」と幸子も笑いながら母に云った。
運命の描いた絶頂で戯れているような、母子二人の不思議なあきらめの良さに、これはもう、悲しみを越えた軽やかな美しさになっていると、矢代は今さら二人の顔をあらためて見るのだった。しかし、まだ彼自身はあきらめきれず、底冷えのした悲しさに手枕から頭も上らなかった。
幸子は母と暫く会葬者たちの噂をしていてから、その途中で矢代の方を向いて訊ねた。
「兄さん告別式のとき玄関で一寸物を云った方があったでしょう。あの方どなた。若い女の方と一緒にいらした方よ。」
「あれはパリのときの友達だ。」
矢代は今の塩野と千鶴子のことに関しては触れられたくはなかったので、一言答えただけで仰向きに長く伸びた。