Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

鉛筆に似た、赤い灯台のある岬の先端を廻って入港して来る船、首の金具を鋭く耀かせて疾走する小蒸気、薄鼠色の船体を並べた外国船、浮標の間を巧みにあやつる櫓、荷上げ、荷卸しなど、窓の両側に映った船の景観は、矢代の通って来たどこの海路の港ともよく似ていた。

「皆さんはどなたも、もうお父さんがいらっしゃらないわけだなア。」

と、矢代は、世放れのした海から父の死を感じ、ふと塩野と佐佐との身の上のことも思い出したりした。今目前の景色も、父のいたときに眺めたなら、あるいは感慨も今とは少し違うのではなかろうかと思ったからだった。

「そうだね、君もとうとう僕らの仲間入りしたわけだよ。」と塩野は云って笑った。

「どうも僕は、何んだか少し、勝手がいつもと違うように思えるんだが。」

矢代はまたあたりの風景を眺めてみた。父のいるときには、自分の背後に父からの長い紐がついていて、そこから養分を吸い摂りつつ、それも知らずに迂濶に見ていた景色だった。それが今は、ぶつりと背後の紐は断ち切れて、眼に映る港の建物、船舶、街路の起伏に連る人家の隙間と、直接自分の根を張りわたらせる樹木のように、独立してゆくものの切迫した、初初しい悲しみを彼は覚えて来るのだった。