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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

」と遊部は不興げにひとりにたにた笑った。

東野は隣りのその遊部に何事か云いかけようとしたとき、エレベーターから顕れた久木男爵が、ボーイに案内されて彼の方へ近よって来た。

「わたしは郵船へ電話してみたところが、入港が遅れそうだというので、つい藤沢で閑をとりすぎました。しかし、多分こちらだろうと見当をつけてみたところが、やっぱり当った。まア、御無事で何よりでした。御苦労さま。」

大実業家というよりも芸術家に見える、久木男爵はこう東野に挨拶をしてから、食卓の周囲の顔を見廻した。そして「やア、これはこれは、どなたもお揃いですね。」と云って、矢代にもへだてのとれた情愛の籠った眼を向けた。

一同の話題はそれから再びなごやかな風に変って来た。食事も横浜の支社ですませて来たと云う久木男爵は、葡萄酒だけ少量唇につけ、黙っている婦人たちの方へ笑いを誘う軽い巧みな話題を向けるのだった。一番年長者だけに万遍なく食卓の両側に気をつけた細やかさで、この富豪の常の気苦労もよく感じられる自在な表情だった。

しかし、矢代はもうこのときから、いつもの自分ではなくなるように思った。それは自然に父の死を思い出したからだったが、――父の死の直前、久木男爵に自分が会ったということが、父の死の原因になったと思っている矢先だった。