Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
またそれは男爵に悪意を持つことでもなく、むしろ善意に解した場合、一層その度を強める性質のことにも拘らず、何んとなく矢代は、眼前に当の男爵がいるだけで今までの彼ではなくなるのだった。
「久木さんはお幾つだ。」
こう矢代に訊ねたときの父の嬉しそうな眼もと、彼に銚子をさし傾けてくれた謙虚な気持ちなど、思えば、そのときの父の代えがたい喜びであったものばかりが、今はそのまま喜びとしては彼に伝わらず、どう仕様もない一抹の悲しみの露となって滴り、漸次にじりじり胸中に拡って来るのだった。
食事がすんでからそれぞれ、バルコオンよりの部屋へ移り椅子を変えた。矢代は久木男爵から離れた椅子をとると、港の方をひとり眺めた。彼の位置からは、平尾男爵の令嬢たちが、柔いフランス語で戯れている無邪気な肩のあたりから、灯台の鋭く明滅する光りが見えた。どこかフリジヤの花を思わせる少女たちの姿だった。光りの廻って来るのを待っているうち、矢代がパリへ着いて間もないころ料理店の一隅で、偶然この幼い子たちを見た記憶が蘇って来た。すると、またその光りの遅い廻転は、ふと父の骨が火になって出て来たときの、最初の鮮やかな色を思い出させた。