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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

賑やかな通りに出てからも、傍を人の通り抜けようとするとき、身を除ける自分の肩が千鶴子に触れると、つい押し気味になって彼は千鶴子を道の片側によせていった。そして「今夜はお宅まで送らせて貰いますよ。」と云ってみた。

まだ意味も分らぬ容子の千鶴子は、ちらっと彼を見て笑っただけだったが、そのとき烈しく片頬に灯を受けた靨の鮮やかさは、初めて船で見たときと同じ美しさだと矢代は思った。

「僕は二三日中に重要な手紙を上げたいんですが、そのときには、あなただけでも、うんと云って下さい。良ろしい?」

千鶴子は返事をせずに軽く一寸頷いた。

四人づれの矢代らは、省線を降りてから暗い道を幾つか曲って行くうち、もう来た方向も忘れるほどになった。道路の中央に椎の木が肌に飴を噴き流し一本立ちはだかっていた。穴のある節くれ立ったその幹の裂けた半面に、交番の灯が射していた。矢代はいつか秘かに来て見てここで車を降りたときの、見覚えのある樹と交番だと思った。

近づいたとき彼は、馬の首を打つように懐しく椎の幹を叩きながら、

「もう遠くはないなア、これは見覚えのある樹だ。」とひとり呟いた。

それは名木だった。