Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
それにまた、彼の悩まされた書記官のピエールと千鶴子とのオペラでの一件のことにしても、同様に大臣邸のその夜会が始まりのようでもあったが、いずれもそれらの起りはみな、塩野の今の言葉で、初めて矢代にはよく頷けて来ることばかりだった。そして、
「何んだ、あれがね。」と彼も思わずそう云ったまま暫く塩野の顔から眼が放れなかったが、実際、自分にとっては重なる苦楽の集るところに、何も知らず男爵はいたものだと、むしろ今は、人には語れぬ鬼気こもる縁の深さにますます彼は愕くのみだった。
「あれがね、でもないよ。君は知らないからね。僕たちのあのときの苦労は。」と塩野は塩野で、またそのために思い起すことも多いらしかった。
「いや、君たちのお蔭で、僕も苦労をさせられる羽目になったのさ。」と矢代も今は負けずに云って笑った。そして、千鶴子に対い少し皮肉に出たくなって、
「その後ピエール氏から便りはありませんか。」と訊ねてみた。
「一度。」と千鶴子は肩を一寸すくめた表情で答えると、「お見せしてよ、後で。」と云って、ビールの栓を抜く手つきもいつもとは違い、争われぬなまめいた形になるのだった。