Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
路は曲り曲りしていた。路の曲りの樹木の左右に放れた処から見ると、黎明の光を受けてれたようになった空の下に、立山の主峰が尖んがった輪廓を見せていた。
路は大きな谷間の方へ降りて往った。その路を歩いていると池のようになった十坪位の窪地が前に来て、路は其処から右へ折れていた。案内者は窪地の縁に往くと足を止めた。
「此処が立山の地獄でございます、此方へ坐って待っていなさると、むこうの高い処を亡者が通ります」と、案内者は提灯の灯をあげて云った。
窪地のむこうには薄く篠笹の生えた勾配の緩い岩山の腰があった。小八は案内者の云うとおりになって案内者の持って来た荒薦を敷いて坐った。
「それでは、日の出比になってお迎いに来ます」と、云って案内者は提灯をくるりと廻して帰って往った。
小八は黙って坐っていた。案内者の提灯の灯は谷のむこうに越えてしまった。小八は背筋がぞくぞくするけれども窪地のむこうにやった眼は動かさなかった。
夜はますます明けて来て谷の中は微暗かったが、空は明るくなっていた。と、白い物の影が小八の眼にちらちらと映った。白装束をして頭髪をふり乱した背の高い女の姿が窪地のむこうの岩山の腰に露われて、それがむこうの方へ往こうとした。