Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
「そうか、これか、これがあれば大丈夫じゃな」
主人はまた白い歯を出して笑ってそれを袂に入れてしまった。お作は不審した。
「これから、御主人はお休みになるから、女子にお伽をさせるがよかろう」
従者はお作の顔を見た。お作は当惑した。
「どうだ、お伽をさしても好いだろう」
「これは、彼の」
お作は厭と云いきりたかったが、その怒を恐れて口籠った。
「厭と云うのか」
「女はまだ小供でございますから、どうか」
「小供でも許さん」
女は逃げようとした。従者はその手をぐっと掴んだ。お作ははらはらした。が、ふと、木札を入れた主人の怪しいそぶりに心が往った。十八年目に祟りがある、二歳であった女が二十歳になった。もしや、この武士が魔物ではないかと思った。女は従者に捕えられて叫んでいる。お作はいきなり起って地炉の傍へ往くとともに、懐の守袋の中に入れてある木札を執ろうとしたが手が顫えて執れないので、その紐を引きちぎって袋ごと火の中へ投げ入れた。
室の中の空気に凄じい激動が起こった。主人の武士をはじめ従者達は、雷にでも打たれたように背後へひっくりかえった。お作と女は世界が揺いだように思った。