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Japanische Klassiker mit Furigana

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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme

Aozora Bunko

沖を見ますと、潮曇のようにどんよりと曇って、その間から房州の山が薄すらと見えておりました。

程なく門跡様のお駕籠がまいりましたと見えて、なむあみだぶ、なむあみだぶ、と、念仏を唱える声が波の打つように聞えてまいりました。そうなって来ると、その附近にいた信者達は、狂人のような眼つきをして、お駕籠を見ようとしましたが、並木や人の頭ですぐは見えません。気の早い者は、それでも、もう、なむあみだぶ、なみあみだぶ、と念仏をはじめました。

先供をしている寺侍の笠が見えたかと思うと、門跡様一行の行列が見えてまいりました。念仏の声はますます高まってまいりました。人びとは前へ前へと出ますから、行列は右に曲り、左に折れて、真直に歩けませんでした。

そのうちに門跡様のお駕籠が眼の前にまいりました。大波の崩れるような念仏の声が四辺に湧きかえりました。門跡様のお駕籠を拝もうとする者が我れ前にと雪崩を打って進みましたから、忽ちお駕籠が動かなくなりました。お駕籠の垂れは深ぶかとおろしてありますから、お姿を拝むことはできなかったのです。幸い手前の方におりましたから、お駕籠の中に物の気配のするのをはっきりと感じました。