Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
「戸を開けてくれ」
女房は縁側に出て雨戸を細目に開けた。外は暗かった。九兵衛は後から往って掌の中の虫をむこうへ突き放すように捨てて戸を閉めた。
翌日の午時分、九兵衛と女房は茶の間で火鉢をなかにして、親類の女の嫁入りのことに就いて話していた。
「叔父の処じゃから、箪笥位は買うてやらんといかんじゃろうな」と、云って九兵衛は見るともなしに女房の右の肩端を見ると、一尾の蠅がとまっていた。「また、蠅が来たぞ」「何処に」と、女房が顔を動かすと、蠅は九兵衛の膝頭に移った。
「昨日の蠅でしょうか」
「そうかも判らんな」
「煩いから潰しましょうか」
九兵衛は両手の掌を窪めて左右から持って往ってすぐ掌の中へすくいこんだ。
「潰さずに何処か遠くへ捨てさせよう、店から袋を持っておいで」
女房は黙って部屋を出て往ったが、直ぐ店で使う小さな紙袋を持って来た。
「清吉が堀川の方へ用達しに往くそうじゃから、あれに捨てさせましょう」
九兵衛は女房に袋の口を開けさせ、その上に手を持って往って下の方から蠅を出し、急いで袋の口を捻じた。女房はそれを持って再び店の方へ往った。
夕方になって親子三人で夕飯をはじめようとしていた。