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Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.649 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

そして惑わしのように、いつか小松の云った言葉があたまにうかんでくるのだった。――これまでに縫いつくろいをして来た針の跡をつないだらどれほどの長さになるだろう、恐らくそれは想像を絶する長さに違いない。然もそこからはなにものも遺らなかった。炊事や洗濯に使い捨てた水、釜戸や火桶で焚いた薪や炭、それらの量もたぶん驚くべき嵩に違いない。そしてこれまたそこからはなに一つとして遺るものはないのだ。然もそういう苦労を凌いで育てた妹たちから非難のこえを聞くとすれば、いったいなんのための苦労かと疑いたくなるのは無理もあるまい。弥生は初めて、ほんとうにつきつめて考えぬかなければならぬことにゆき当ったと思った、あらゆる人間がその問題について考えるとき必ずそう思うように……。

「このごろなんだか沈んでいるようではないか」

良人が或る夜そう問いかけた、

「からだのぐあいでも悪いのではないか」

「はあ……」

さようなことはございません、そう云おうとしたが、にわかに感情が昂ぶって口がきけず、そのまま黙って眼を伏せた、

「どこか具合が悪いのか」

三右衛門は訝しげにこちらを見た、

「もしそうなら無理をしてはいけない、医者にみせるとか薬をのむとかしなければ」