Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.743 Zeichen · 22 Bildschirme
「いえ、なみをめとりましたとき、あれにそうおさとしくだすったのです。わたくしは次の間からもれ聞いたのですが……はじめて母上の御日常がわかったと思いました」
藤右衛門はじっと自分の右手をみまもっていた。その右のたなごころには、まだあのときの触感がのこっているようだった。――千石の奥の手ではなかった。あの皮膚のかたさ、ひどく荒れた甲は、千石の家の主婦のものではない、朝な夕な、水をつかい針を持ち、厨にはたらく者とおなじ手であった。
やす女は大御番頭九百石の家に生れ、五人きょうだいのなかのただ一人の娘として家族の愛をあつめてそだてられた。顔だちもまるくおっとりとしていたし、たちいふるまいものびやかで、彼女がとついで来てからは、きゅうに家のなかが春風のふきとおるようなにおやかな気分につつまれたものである。よそよりもいちだんと家法のきびしい、規矩でかためたような佐野家の日常とはまるでかけはなれた、のびのびとした雰囲気を身にもっていた。――これで家政のたばねができるだろうか。はじめのうち藤右衛門はいつもそれを案じていたくらいだった。そういうかんじはいつまでも頭から去らなかった。