Japanische Klassiker mit Furigana
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にほんふどうき
日本婦道記
山本 周五郎
Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.743 Zeichen · 22 Bildschirme
五
良人の眼にもつかず、まして世の人には窺い知ることもできぬところで、妻はそのつとめを全身ではたしていたのだ。
「そうだ、いまにして考えれば思いあたることがしばしばあった」
藤右衛門はふたたび低く呟いた。
五
まえにも云ったとおり、佐野家はもともとゆたかな家計をもっていた。けれどもきまった食禄でまったくの消費生活をするということは考えるほどたやすくはない。物価のうごきや家族の増減、そのほか眼にみえぬところで出費は年々とかさんでゆくのがふつうだった、しかも武家には格式というものがあって、千石は千石だけの体面を保たなくてはならぬ。佐野家がいかにゆたかな家計をもっていたとしても、これをうけつぐ者にすこしのゆだんでもあれば、たちまち底を洗うことはわかりきったはなしだ。藤右衛門は藩の御勝手がかりとして、四十余年のあいだしばしばそれを痛感して来た。紀州五十余万石の経済ではそのことを痛いほどかんじながら、自分の家のことにはまったく関心をもたなかった。ある年、家臣一統から藩へ献上金をすることがあった、そのとき佐野家からは三百金ずつ前後数回にわたって献上した。――噂にたがわず佐野家は内福だ。