Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.547 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

三

幼ない者の手を合わせてやり、低く唱名念仏しながら、みよは涙のなかからしっかりと遺髪を見あげて云った。

「旦那さま、安之助の事は御安心あそばせ、かならずりっぱなさむらいに育てあげてごらんにいれます。御遺言のなかったのは、わたくしをお信じあそばしてのこととぞんじます。みよはそのお心を決して忘れませぬ」

そのとき襖のかなたで、耐えかねたように誰かのすすり泣くこえが聞えた。

三

あくる日の朝、みよは安之助を背に負って家を出ていった。美濃のくに加納藩に実家があるので、ひとまずそこへ落ち着くことにきめたのである。お咎めによる追放なので、知りびとは云うまでもなく、召使たちも見送ることはできなかった。ただひとりだけ、藤枝の在から奉公に来ていた下僕の六兵衛が、目付役とともに島田の宿まで送ってきた。かれは美濃までの供をねがってきかなかったけれど、みよはかたく拒んでゆるさなかった。残暑の照りかえしで、ひろい川原は眼もくらみそうな暑さだった、母子はその川原をとぼとぼあるいてゆき、やがて人足の肩に倚ってかなたの岸へと越していった。

それから三日経った。旱りの続いた夏のあとで、待ち兼ねた雨がまさしく秋のおとずれのように降りだした日の夜、八時ころと思えるじぶんに藤枝在の水守という村にある六兵衛の家をひそかにおとずれる者があった。