Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.032 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

「そう、……万一ということがあるからな」

平三郎は立って廊下へ出た、母親は呼び止めようとしたが、彼の態度が余りきっぱりしているので声が出なかった。……彼は八重に声を掛けておいて、自分の居間へはいった、八重はすぐに来た。しかし障子の外に手をついたまま、部屋の中へはいろうとしない。平三郎はそのようすに不吉な予感を覚えた。

「今朝のことをいま両親に話したところだ、父上も母上も許して下さるようだが、おまえは承知して呉れるかどうか」

「……お返辞は」と、八重は低い震え声で云った、「ここで申上げますのでしょうか」

「うん、いま聞きたいと思う」

八重は面をあげなかった、両手を敷居の上に置いて深く顔を伏せたまま、しかしかなりしっかりした口調で答えた。

「若旦那さまの思し召は、身に余る冥加でございますけれど、本当に勿体ないほど有難うございますけれど、わたくし国のほうに約束をした者がございまして」そこまでいうと、八重の肩が見えるほど震えた、「……わたくしの勝手で延び延びになっていたのですけれど、近いうちにはぜひともお暇を頂かなければならないことになっているのでございます」

「それは、いつ頃からの約束なんだ」