Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

Lesen Sie 日本婦道記 (にほんふどうき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 9.672 Zeichen · 20 Bildschirme

Aozora Bunko

――ああお会わせ申したい。

けれど本当に会わせてもよいだろうか、仙千代を去らせてから、松子はもういちど自分の立場をよく考えなおしてみた。「信濃へかえってはふたたび逢うこともおぼつかない」手紙にはそう書いてある、昌幸はまだ五十五歳で老い朽ちたという年ではない、また信濃のくには遠いけれど再会をおぼつかながるほどではない筈だ、それにもかかわらず昌幸が押して逢おうとするのは、なにかそうせずにいられない理由があるのではないか。信濃へかえると、もう二度と逢えなくなるような理由が……松子の心はその一点へきて止まった、くずれかかっていた気持がにわかに立ちなおった。――忍緒を切った心でいよ。そう云った良人の言葉がはっきりあたまに甦えってきた。そうだ、情におぼれるときではない、祖父と孫、舅と嫁のつながりも大切であるが、今は戦いの時である。もし安房守父子を迎えてそのまま城を奪われたらどうするか、仙千代を隼人を、もしも人質として取られたらどうするか、世間にためしのないことではない、ことに安房守のこしかたには信頼をゆるさぬ多くの事実がある。拒むべきだ、それが留守をあずかる者のつとめだ、松子はついにそう思いきった。