Japanische Klassiker mit Furigana
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にっき
日記
宮本 百合子
Lesen Sie 日記 (にっき) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.083 Zeichen · 7 Bildschirme
女の方は幾分明るく、〔九字伏字〕、〔十五字伏字〕あったが、朝のその刻限には、毎日きまってホーホケキョ、ケキョケキョと明晰な丸い響で高い窓から鶯の声が落ちて来るのであった。鶯の音のする方からは、夕方揚げものをする油の芳ばしい匂いも流れて来た。その匂いを深く鼻の穴に吸いこんで嗅ぐと、半歳近く湯にいれられぬ皮膚が、ほのかにうるおい、食慾も出るように感じるのであった。
商売
帳簿を立て並べた長い台に向って、土間に、白キャラコの覆いのよごれた粗末な腰かけが三四脚おいてある。薄禿げで、口のまわりに大きい皺のある小柄な主人が縞の着物に黒ラシャ前垂をかけ、台に坐り筆で何か書いている。主人の背後には、差入れをたのまれた書籍類が数冊ずつ細い紐でしばっておいてある。
この差入屋の店へ私はあとから入って来たので、今主人が応待しているのは若い女のひとであった。若い女のひとはすっかりよそ行きの化粧と盛装で、白いショールをはずし、それを両手にからみつけるように持って立ち、
「何がよろしいんでしょうねえ、何でもいいっておっしゃるんですよ」
と、ものを書いている主人に、馴れない、すがりつくような様子で云っている。