Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Lesen Sie 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.172 Zeichen · 36 Bildschirme
それによい事は、隣りの部屋ぬしも夜中は不在、わが部屋もお詰め処へ寝る番が二人とも一緒の日が多い。そうなると居候が大威張りで、自室の女中も、となり部屋の女中も、若いものがお引けすぎに寄って来て、芝居の噂話をよろこんでして、お菓子を食べて帰ってからが我が世なのだった。権威のあった御愛妾さんも、御酒が飲めるほうで、毎晩部屋で晩酌のあとは、部屋女中から、あたしからきいた芝居の話をきくのを珍らしがって、夜中の仕事も聞かぬではないが、そんなに好きなら仕方がないと、大目に見てくれたりした。あたしは六円の月給をはじめて得て、三円を食費の足しに差引かれても、残るお金で毎朝小使いさんが下町へ買いものに出るのに頼んで、書籍を購うことが出来た。その時分『女鑑』だとか『大日本女学講義録』などが出て、学びたい餓えを、すこしばかりは満たしてくれた。
しかし、間もなく、あたしの胸は本痛みになり、隠していたが、ある日の正午ごろ、おくれた朝の仕事をおわって、身じまいにかかろうと、倒れそうな身を湯殿へはこび、風呂にはいるとだめになった。ここで倒れては大変と、拭うひまもなく衣服に身をくるんで、部屋までどうして帰ったか、壁ぎわに横になったまま、半ば意識を失って、死生の間を彷徨する日が十日もつづいた。