Japanische Klassiker mit Furigana
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はやみみさんじとりものききがき
早耳三次捕物聞書
林 不忘
Lesen Sie 早耳三次捕物聞書 (はやみみさんじとりものききがき) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.640 Zeichen · 21 Bildschirme
辰はいかさま眼の大きな、愚鈍というよりは白痴に近そうな男だった。夜饂飩を売りに出るので帰りは早朝になる。したがってこの時刻は辰にとっては白河夜船の真夜中だから、戸外の騒ぎを知らずに熟睡していたというのもけっして不自然なことはない。障子の血形や血まみれのお菊の下駄を突きつけられても、辰はぬうと立ったまんま、どうしてそんな物がそこにあったのか少しも解らないと申述べた。
むしろ融通のきかない方かもしれないが白を切りえる質ではない、三次は辰をこう踏んだ。だいたいこんな、鰹一匹満足に料れそうもないぶきらしい男に、ああも鮮かに生胴を斬る隠し芸があろうとも思われないし、それに、いくら少したりないとはいえ、自分の家の入口に血を付けたり仏の下足を片っ方持込んで見てくれがしにそこらに抛っておいたりするような、そんな間抜けたことはよもやすまい。この男にあの袈裟がけ斬りの疑いを懸けたことが三次は自分ながらおかしくなった。が、何はともあれ念のためと、玳瑁の櫛を出して問い詰めると、辰はすぐさま頭を掻いて、じつは誠に申訳ないが、年の暮れのある晩稼業の帰途に、筋交御門の青山下野守様の邸横で拾ったのだが、そのまま着服していて先日父親に内証でお菊に与ったものだと言った。