Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はるのやま

春の山

久生 十蘭

Lesen Sie 春の山 (はるのやま) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.782 Zeichen · 18 Bildschirme

Aozora Bunko

張方か客人か、表通りの店で見かける商家の旦那をまぜた三十人ほどが、申しあわせたように一升瓶をひきつけ、笑ったりしゃべったりしている。

リンクの左手のすこし離れたところに、野立の茶会のような幕を張ってあるのは、支度部屋というようなところなので、伏籠の中であばれまくる鶏の声が聞えた。

世話役の一人がリンクのそばへ行って、

「第五回は花試合……持ち時間は四十分となっております」

と錆のかかった渋辛声で披露すると、六さんと由さんが、ちがうひとのような甲走った顔で、伏籠を抱えて出てきた。

「片や明月院、片や佐介」

リンクのまわりで、わっと歓声があがる。

六さんと由さんは東西に分れ、リンクの近くに伏籠を置くと、如露で鶏に水をかけ、そろそろと伏籠から出し、羽交の下に手を入れてしずかに抱きあげた。

世話役がストップウォッチを見ながら、ヘッと突んぬけるような奇声をあげると、六さんと由さんは同時にリンクにおりて、向きあう位置に鶏を据えた。

いきなりあばれだすのかと思ったら、そうではなく、両足の間にひっ挾むようにして、じっと鶏をおさえつけている。

軍鶏師の禿頭にうららかな春の陽が照り、二羽の軍鶏は、なにかしんとしたようすで、たがいに顔を見あっている。