Japanische Klassiker mit Furigana
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はるのやま
春の山
久生 十蘭
Lesen Sie 春の山 (はるのやま) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.782 Zeichen · 18 Bildschirme
世話役が佐介の骸をさげて雑木林のほうへ来、ひと振りして無雑作に周平のいる草むらへ投げこむと、すぐつぎの試合がはじまった。
佐介はまだ生きていた。生きているしるしが、かすかに残っていた。嘴を折られ、眼玉をえぐりだされ、不幸な人間の末路といったぐあいに長く伸びていたが、そのうちに意識が戻ってきたふうで、血をためた眼窩を上にむけ、途方に暮れたようにトホンと空を見あげてから、辛い努力をかさねながら、草むらから身体を起しにかかった。
何度か失敗して、やっとのことで立ちなおると、死の終局が近づいていることを知りつつ、最後まで本性に忠実であろうと勉めるように、攻撃のかまえで、ヨタヨタと周平のいるほうへ歩いてきた。しかし、その行動はいっこうに甲斐のないもので、ものの一尺ほど歩いたところで、尻餅をついてへたばってしまった。
佐介の眼から、だしぬけに涙のようなものがあふれだした。へし折られて、嘴ともいえないような短い嘴のあいだから血と胆汁を吐き、あおのけにひっくりかえって、縋るものがあったら縋りつきたいというように、ギクシャクと脚を踏みのばしていたが、間もなく身体が硬直し、乾反ったように突っぱってしまった。